ノンフィクションクリエイター

手を伸ばしてみる。
届かない戸棚。
そこには何があるんだろう。
大したものは入っていないと言われる。
それでも僕は手を伸ばす。

大きくなって、
手が届く範囲が増えた。
実際そこに大したものは入っていなかった。
多くのものが、
子供のころ手の届かなかったものが、
今では簡単に手が届く。
それでも、
そこに美しい、輝いている、感動するような、
そんなものがあることは稀で、
ほとんどは下らない、大したことはないものばかり。

でも、
考えてみたことはあるだろうか。
それは子供にとっては美しいものなのかもしれないと。
考えてみたことはあるだろうか。
感動しなくなった自分について。

手を伸ばす子供がいる。
私は大したものは入っていないとは言わない。
取ってあげることもしない。
もっと手を伸ばすところを黙って見ている。

時間が経過し、手を伸ばし過ぎた私は、
きっと何もない所で転ぶようになるのだろう。
当たり前だ。
足元を見る機会などほとんどないのだから。
それでも私は手を伸ばす。
そこにあるのは砂金か、砂か。