手杯

手で水をすくっても、それは自分の意図するしないにかかわらず、手から零れ落ちていく。
人の気持ちも同じ。
どんなにその人の気持ちを汲もうとしても、それはたちまち両手から逃げていってしまう。
結局、人の気持ちなんて、本人にしか完全には理解できなくて、
理解しようと努めても、最後には無駄にしかならないんだ。
もし例え理解できたとしても、他人にはどうすることもできないことの方が、多いような気がするよ。

僕の心の奥の、思い出という名の残滓。
打ち付けて、引っ掻いて、破いて、抉って、踏み付けて、火をつけて。
それでも消えない、残像連鎖。

いつか、黒に塗りつぶした、トラウマ。
思い出さないように、見えないように、いつもそこには真っ黒なフィルター。
嫌な自分と、苦手な自分と、自己嫌悪な自分を嫌う自分。
負の感情は、先の見えないトンネルを走っているのに似ているよ。

ただ、いつだって、温もりが欲しかっただけなのに。
いつから自分と世界には大きな壁ができてしまったんだろう。
そうか。
自分は監獄の中の囚人か。
いつになったら刑期は終わるんだろうな。
脱走した方が早いのかな。
そうすれば、銃で撃ってもらえる。

('A`)…。