虹色ラプソディ

手を伸ばしても、手の届かないもの
すぐそこにあるようで、実はすごく遠いもの
否
手を伸ばしても、いくらそこに近づいても
そこに「もの」なんて無くて
あるのはただただ、青い空

僕が探していたもの
私が探していたもの
いつもすぐそばにあったのに
いつもそこにいてくれたのに
いまはもう…

雨は嫌いだ
濡れるのが嫌だから
太陽は嫌いだ
暑い日ざしが嫌だから
虹は嫌いだ
誰の手にも届くことはないのに、そこにあるから
雲は好きだ
いつも流れて、形のないその自由さが
空は好きだ
絶えず変化し、それは自分と似ているから
月は好きだ
夜に現れて、優しい光で癒してくれるから

明日になれば消えるとわかっている幻に
どうしていつも僕等は手を伸ばす
きっと、自分に酔っているんだ
幻想を追い求めるその後姿に
きっと、信じているんだ
いつかそれが幻想でない日が来ると

誰もが自分の信じた道を歩み
私はその誰かの道の上にはいなかった
自分は、自分の道の上…他の誰かはいるのだろうか
信じたくなくて、考えたくなくて
こうなった原因でさえ、多分、仕方の無いことなのだ

明日になって、明日は今日になって
そこで僕等は現実を知る
それは思い描いていた虹色の未来なんかではなくて
それは暗い闇の底
誰もが落ちては出て行って
私はそこで、一片の光でさえ見出せずに佇んでいる

ずっと、昨日が続くと思っていた
私は、馬鹿だったんだ
当たり前過ぎて
大切なものが見えてなかった

ああ、私は、ここで、すぐに消えてしまえる虹になりたい
そこには短い間であれ、輝く光がある
誰の手にも届かないからこそ、見えるものがあるのだろう
矛盾だとわかっているけれど、それでもあの虹になりたい
そこには七色に輝く色彩の光がある
誰にも触れられなくていい、私の色がそこにあるなら

時を忘れて、輝きを忘れて
色を失くして、光を失くして
言葉を忘れて、文字を忘れて
昨日を失くして、明日を失くして
僕は、私は、ここに…

ULTRA SILVER

銀色と灰色の違いとは何か
質感？
否
光を反射するか吸収するかの違いだと思う
自動車の場合それは特にわかりにくい
灰色に塗っても人によっては銀色に見えるだろう
恐らく、自動車のボディは金属製であり
塗装しても光の反射を抑えることが難しいからだと思われる

物質としての銀は酸化に弱い
よって、装飾品を身に着けての温泉等の入浴時には注意が必要である
しかし、ある意味では酸化被膜を形成する為、後の酸化に強い可能性もある

光の無い空間では銀色と灰色の違いは何なのだろう
しかし、光が無ければ色は認識できないので、その空想も無意味か

光…
色を決定付けるのに光は不可欠である
だが、完全に光の無い空間は、なかなか稀である



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左手に光るひとつの指輪
それは紛れも無い銀だった

いつだったかな
彼女に銀の指輪を贈った様な気がする
今でも机の上には色違いのひとつの指輪
中身は銀で周りを何かで覆った黒い指輪

そんなことはどうでもいい

今日も空は曇っていて
重そうな空気に灰色の雲

雨が降り出した
しかし、中途半端な小雨
こんな日は、傘を差さずに外を歩きたくなる
しかし、自分は車を運転していて
ガラスは正直だ
小雨も容赦なくフロントを濡らし
ワイパーは汚れた窓を完全に掃除してはくれない

昔は何もかもが光って見えたっけ
あらゆるものがメタリック
汚れなんて、この世には存在しないと思ってた

現在がここにあって
それ故に日々変わりつつある価値観
否
変わらないものなんて
きっとこの世界には存在しないんだ
時間は流れ、自分も周囲も、汚れていってしまう
そんな世界だ

綺麗なものなんて長くは続かないって知って
そういったものを追い求めることにも飽きたよ

ここにあるのは
どこにでもある
くすんだ色をした
しおれた物ばかりだ

でも
生きることって
そういうことなんじゃないかな
汚れていって
綺麗じゃなくなって
そのうち
何も前が見えなくなってしまう

そういう意味では子供が一番純粋なんだろう
輝いていて
光っていて
きっと汚れることなんて
何も考えていないんだろうな

自分はどうだ
大人になりたくなくて
もがいているんじゃないだろうか
今はまだ、銀色
そのうちきっと
あの空のような
霞んだ灰色になってしまうんだろう
それでも
前を向いて、必死に
汚れないように生きていくしかないのかな



いつまでも、光っていたいな…。

紫陽花

梅雨の時期なのに
降らない雨
私は雨が好きだ
泣いていても
誰にも気付かれずに済むから

そろそろ肌も乾いてきた
蛙だって雨を欲しているよ
ねえ
どうしてこんなに晴れているの？
雲だって一つも在りはしない
こんな日は嫌いだ

生まれ落ちたその場所によって
個性が生まれる
私は何色なんだろう？
カタツムリも教えてはくれない

変わらないもの
変えられないもの
きっともうそれは決まっていて
私に選択権はない
どうしてここに生を受けたのか
その意味もわからないまま
ただ生きていくしかないんだろうか


通り雨が降りだした
よかった
これで私もまた生きていける
よかった？
本当によかったのかな
そんなことはどうでもいいか
蛙とカタツムリは喜んでいるみたいだし

雨上がりに虹がかかり
水溜りは空を映し出している
明日のことはわからない
だって
明日の天気ですらわからないのだから
でも
明日への
未来への
焦燥感は未だ消えないまま

きっとこの景色も
きっとこの時間も
いずれ忘れ消え行くのだろう
それでも私は
ここで生きて
そして死んでいくしかないんだろうな


雨に濡れた傘をたたんで
誰かが私の前を通り過ぎてゆく
その子は立ち止まって振り返り
私を見て微笑んだ

どうでもいいことだ
私の色なんて
それはきっと
その子には映っただろう
そして
私は誰かを
一瞬でも
ほんの一瞬でも
幸せにすることができたんだ
きっとこれが
生きているってことなんだ


雨はまたしばらく降っていない
それでもいい
ここに私は生きていて
私の色は存在していて
ここで生き抜く決心はついたよ


ある晴れた日の午後
僕はある花弁がしおれそうな紫陽花をみつけた
きっとそれも
生きている
生きてきた
証なんだろうな

白詰草

いつか
君が泣いたあの日の夜
僕も泣いた皐月の夜


月は出ていましたか？
星は笑っていましたか？


あるとき
道端に見つけた白い花
四葉ではない緑の葉


空は晴れていましたか？
雲は悲しんでいましたか？


幼い頃
母が押し花にしてくれた幸せの葉
それだけで嬉しくて
それだけで楽しくて
何もかも忘れていられた


切ない気持ち
過ぎ去りし思い出に浸る気持ち
刹那い気持ち
不意に襲われる絶望に沈む気持ち


きっと僕は
四葉ではないただのクローバー
道端に咲く一輪の白い花
美しくもなく見向きもされず
３枚の葉を空に向けて広げている
あの雲を掴み取るその日まで


きっと君は
三葉ではないレアなクローバー
道端に咲く一輪の白い花
美しくかつ見つけられて
４枚の葉を誰かにもぎ取られている
何処かの誰かを幸せにする為に


正しいことなんてきっとこの世には何一つなくて
誰かに踏まれたり蹴られたりしながら
ただ生きているだけなんだ
その傷もその意味も
太陽と雨が癒していって
いつの日か感じなくなるんだろう


でもそれでも生きること
ただそれだけはやめることが許されない
太陽と雨が続く限り
時間と空が続く限り

あの空の色

いつかみた
何色ともいえぬ
空の色
それはきっと曇り空
水色というには淡く
灰色というには白く
白色というには色のある
どこか不思議で懐かしく
どこか寂しさを感じる
そんな空の色だった

そういえば水色って、
どうして水色っていうんだろ
水に色なんてないのに。

現実に存在しないものを
きっと感じていたいんだ
ほら　部屋のぬいぐるみたちだって
いつの間にかおしゃべりしなくなった

当たり前で
そこにあって当たり前で
大切なことに気づけなかった

雲の切れ間から
光が漏れる
でも
光が当たるのはここじゃなく
どこか遠い場所

明日は晴れるかな
でも晴れてもどこか
雲はあってほしい
掴めなくて
固定形のない雲だけど
すこし安心するから